しぶちんはしぶちん

mixi で日記を書いていたのですが、廃れてきて書いていてもせんないので、ブログにすることにしました。綴り方の練習くらいのつもりかな。

早野龍五氏と科学的態度

 原発事故以来、沢山の「科学者」がブログや twitter で見解を述べています。その中で、東京大学理学部の早野龍五教授の活動は、他と一線を画していて、科学というものが何であるかを見せてくれています。
 御用学者という言葉に象徴されるように、現状の危険性について意見は真っ二つに割れて、議論しても溝が埋まりません。早野氏は、もちろん見解をお持ちなのでしょうが、それについては言及を避けておられるように見えます。行なっておられる活動は、現状をきちんと把握しようというもの。例えば、Whole body counter の計測の問題点を指摘し、きちんと測れるようにする方法について、メーカーや現地の医療機関と共同で検討しておられます。普通の人は計測器って当てれば測れるものだと思っているのですが、現在問題になっている計測は、環境放射線にしろ、放射能にしろ、それほど簡単に測れる強度ではありません。計測するということがきちんと分かっている科学者だからこそ、データの断片を見ただけで機器の問題点に気付き、それを改善することが、現状で最も大切なことだと理解されたのでしょう。その辺に私には科学だなあと感じるところがありました。データの断片から機器の問題点に気がつくのは、科学的思考なんですよ。初めに見たデータは放射能の量の数字だけだったはずです。そこから自分の知識に照らし合わせて起こるはずのないことを見つける。つまり、科学とは個別の知識の集合体ではなくて、知識のネットワークが重要なのです。例えば、Cs134とCs137の量比がバラバラであるとの事実を見た時に、「きちんと測れてない」と「同位体分別が起こった」のどちらがありそうなことかを考える際に、後者の後ろには膨大な知識の集積があって、それを引っくり返すのがいかに大変かがよく分かっている。それが科学たるものなのです。そこで、きちんと計測できなていない理由を原理までさかのぼって検討する。研究者でも計測器の中まで分かっていない人も今日び多いのに、素晴らしいことです。また、陰膳方式の給食の放射能測定や、通学路・教室の放射線測定など、個人の実際の被爆量を測定する取り組みは、最小の手間で最大の効果を上げる方法を、提案しておられます。安全だ危険だと議論する前に批判に耐えるデータを取るのが先決だというのはまさしくその通り。
 今後も世論の分裂は続くでしょうし、対策は混乱していくでしょう。その中で、きちんとデータを取るための提案を出し続けていってほしいと切に思います。