しぶちんはしぶちん

mixi で日記を書いていたのですが、廃れてきて書いていてもせんないので、ブログにすることにしました。綴り方の練習くらいのつもりかな。

読了4冊・・・ん?冊かな?

 

ブログ始めたものの、毎日は続きません。mixi 日記を始めた頃の情熱は戻ってこない。

ちょっとあいた間に読了した本4冊について。2冊は iPhoneKindle で読んだんで、なんとなく「冊」という感じはしないんですけど。

 

Steve Jobs』by Walter Isaacson

Jobs ってすごいなぁ、を再認識しました。良くも悪しくもね。めちゃめちゃわがまま。自我の塊。自分の好みを絶対に通す。日本でなら、嫌われ者で終わってしまったでしょう。その中にある才能を見て育てて行った人、ついて行った人がいるアメリカの社会はすごい。もちろん、Jobs のこだわりと、それに対する絶対の自信(少なくとも初めは「根拠無き自信」だった)がすごいことは言うまでもない。「いいものはいい」を貫き通して、そして最後は大衆に支持されたんだから。でも、運にも恵まれていたのも事実のようだ。何度か破滅の危機に瀕しているが、別の事業が当たって切り抜けたとかね。彼が運に恵まれていなければ、私が使っている MacBook AiriPhoneiPad もなかったのだから、ユーザーも運が良かったとも言える。

病気の件では、初めに代替治療で時間を無駄にして、治癒の可能性を狭めたのだったことは、本書で初めて知った。代替治療は成功例ばかり喧伝される傾向があるが、この事実は広めて欲しいなあ。忌野清志郎とかね。Jobs は厳格な菜食主義者だったけど、やっぱり癌にはなったんだし。

一つ、気になったエピソードは、なくなる直前 Ann Bowers に、"Tell me what was I like when I was young" と尋ねていること。普段の Jobs からは想像できない問いに Bowers はひっくり返りそうになったとか。そう言えば、私も(Jobs と同い年です)最近、同窓会に言って、「小さい頃の僕ってどんなんだった?」なんて尋ねました。今の自分ってどう言う風に形成されたのだろうと考える年齢なのかな。ま、私の場合は、死を意識してはいないのだが、キャリアの終りが見えてきていることは事実。キャリアの終りって、一つの区切りという意味では「死」とも言えるわけだ。

今は日本でも iPhone iPad を持っている人が限りなくいます。それらがどこから来たのか興味を持ったら読んでみてはいかがでしょう。お薦め。

 

『Guns, Germs and Steel」by Jared Diamond

読み始めたのはかなり前で、中断していたのだが、毎晩 iPhone を持って半身浴するようになったおかげで読了。

本書のテーマは、「アメリカ大陸をヨーロッパ人が征服したが、なぜ逆にユーラシア大陸をアメリカ人が征服するように歴史は進まなかったのであろうか」という問いである。著者はその答えを、大陸の大きさや配置(南北に長いか東西に長いか)が文明の発展に決定的な影響を与えたことに求めている。文明と技術の発展や衰退の例を、世界中から豊富に集めてきて、極めて説得力をもって議論しているのは魅力的だった。

例えば、アメリカ大陸の民族は武力で制圧されたと言うより、ヨーロッパ人と共に入ってきた伝染病に制圧された、とある。ピサロインカ帝国をあれほど簡単に征服できたのは、直前に王族の多くが死に、内乱状態だったからだという。しかし、逆にアメリカ大陸の伝染病はユーラシア大陸の民族には致命的な影響を与えなかったのは考えてみれば、不思議と言うか、ヨーロッパ人に取って、ものすごい幸運だったわけだ。これを、著者は東西に広がった大きな大陸は、数多くの民族の広範囲の行き来を誘発し、人々の病原体に対する耐性を発達させていたからだと説明する。なるほどねぇ。

このような、文明地理学的な説明は、ヨーロッパ人の多くが何となく信じている人種的優位性ないし優越感を揺さぶるわけで、2000年代の読むべき本第一位になったのもむべなるかなである。

現代文明の恩恵を最大限に受けているわれわれ日本人も、現代文明の発達が生じた基盤について考えるのは少なくとも知識人たるもの必須。本書はまず読む本としてお薦め。

 

『物語 近現代ギリシャの歴史』村田奈々子著

ギリシャの債務危機問題がかまびすしいこの頃、でも、ギリシャって歴史って一番知ってるのは古代だよなぁ、それも変だと思っているところに出会ったのが本書。まず、ギリシャという国ができたのは1830年で、まだ建国200年にもならないという事実が指摘される。そう言えば、一昨年ローマに行った時に建国130年パレードをやっていて、「え?たった130年?」とひっくり返りそうになったのであった。考えてみればドイツだってそんなもんで、この辺はみんな国民国家という概念ができたから作られた国なのだ。しかも、ギリシャは古代だって都市国家は有ったけどギリシャなんて国はなかったとか、ビザンチン帝国時代は自分のことをローマ人と呼んでいてギリシャ人としてのアイデンティティはなかったとか、歴史をちょっとかじっていれば「なるほどね」の事実がたくさんあって、目から鱗になる。

独立の頃から後は西欧諸国のイスラムや共産主義への最前線の国として、列強に翻弄されるというか、それぞれを利用しようとする国内勢力の対立の歴史。そして、内部対立は幾度か内線に発展する。現代ギリシャとの関係が明らかではない古代ギリシャやビザンチン帝国を梃子にしたナショナリズムは、最大版図をめざした膨張主義を生むのであるが、経済力を伴わず、列強の誘導を当てにしているわけで、失敗を繰り返し、そのたびに国内は大混乱。

経済的には、農業も工業も生産力に乏しいのに、古代ギリシャブランドとイデオロギー対立の最前線の戦略的重要さから受けられる欧米からの支援でかろうじて廻っている状況が建国以来続いている。債務危機も今回に始まったことではない。

これはギリシャの責任とばかり言えなくて、欧米ロシアトルコの列強が介入し続けた結果でもあるわけで、独立にせよ、国王の選出にせよ、国境の画定にせよ、ギリシャの与り知らぬところで列強が決めてきた歴史が、今の経済危機の報道においても感じる当事者意識の欠如を作ってきたのだ。本書を読んで、西欧は Euro に入れた以上は、この辺の責任を取らないといけないんじゃないかとの考えが強くなった。

もう一つ、沖縄問題との類似性を感じるのは、本土在住者の傲慢なのであろうか。尖閣諸島の領有権問題と、米軍や自衛隊基地問題の対応の間に矛盾を感じ、また、経済問題においても、沖縄県側の当事者意識の欠如を感じる。ギリシャと同じく、日本とアメリカの間、その前は日本と清の間で、自らの決断とその結果を見ることを奪われてきた歴史が作り出したものなのであろう。まあ、これは、日本のどの自治体をとっても当事者能力を中央政府に奪われてきた点では同じであるし、実は、国立大学だってそうなのだから、沖縄だけを言挙げするのは失礼なのかも知れない。

いいタイミングでいい本を読んだと思ってます。これもお薦め。

 

『ハーバード白熱日本史教室』北川智子

凄い人がいたもんだ。高校卒業でカナダに飛び出してブリティッシュコロンビア大学卒業、プリンストンの大学院で3年で学位を取って、なんとハーバードの講師に抜擢され、3年間で看板講義になってしまうと言う、31歳の日本人女性の著書。内容は、自伝・人気講義の概要・ハーバードの講義評価の解説。文章もうまくて非常に読みやすい。ところどころ、日本語表現で気になったところがあったが、大学以降北米で過ごしているのだから、編集者の責任であろう。

一番人気の講義のタイトルは「Lady Samurai」。レビューしたわけではないけど、研究者としても現在の彼女の売りは「Lady Samurai」なのだろう。日本史において、女性が政治的に果たして来た大きな役割に光を当てる、というのは、現在の日本史学に不足している視点であるという主張には説得力がある。その例として太閤秀吉の北政所ねいが果たした役割を挙げて、すこし丁寧に解説して、これこそは「Lady Samurai」であると言うのは持っていき方がうまい。講義では浅井三姉妹なんてのもきっと出てきてるんでしょうねぇ。日本の学会は細部に拘泥して、全体像の議論が進んでいないとの批判も当たっているのだろうと思う。これは自国史の場合どこでもある程度ある傾向だと思うし、外部から揺さぶらない限り変わらないのであろう。著者の役割を期待してます。

ハーバードの講義の進め方、講義助手の使い方とか、学生の気質、講義評価の率直さと、フランクな結果公開、なんてのも面白いなあ。参考になる。と言って、そのままわが大学にもって来れると、ナイーブに考えたりはしないけど。やっぱり、ハーバードだからこそを感じる。

私だって、今使っている教科書を事前に読んで理解した上で、面白い点を解説していく授業なんてできたらいいし、そこで、気の利いたコメントをバンバン発言してくれる学生がいたらやりたい。成立せんだろうなぁ。

なかなか自分で実現しなくても、マイケルさん出る、おっと、マイケルサンデルの講義だとか、世界で行なわれている面白い講義の情報に敏感であり続けることは重要だと思ってます。そうそう、科学の専門の講義でこの調子のものがあるのだろうかも、気になってるところ。

日本の大学関係者は全員読んでおく本じゃないかな。でも、文科省のお役人が読んで中途半端なことを言い出さないかはちょっと心配。いずれにせよ、大変お薦め。